家隅盛塩雑記帳

幕末文久三年がホーム。マイナー新撰組隊士と悪役。

ヰタ・セクスアリスを読む。

こんにちは、雑八です。
ツイステッドワンダーランドを始めました。
最初に言いますが、当記事はいつにもまして幻覚です。

いまのところの好きな人はアズールさん、エペルくん(美少年)、イデアさんです。

美少年は健康に良い。
しかし、私は旧制学校のあった時代に生まれ得なかったことをひどく悔いているのだ。
ただし、現実の人間社会に上手く溶け込めないので、このような者は二次元の美少年を愛でているのがお似合いなのだろう。
マジモンの美少年に話しかけられたら、恐らくフリーズする。
美輪明宏さんの若い頃などを想像したが、あれに話し掛けられる三島由紀夫さんは強すぎん?無理。

さて、江戸・幕末期の男色についてしらべていたところ、頭を抱えたくなるようなことがあった。
きっと日本古来の男色とは多対一のモノだったのだろうなあと思う次第である。
集団の中で美少年が現れれば、周りの男はともにそれを保護し、あるいは決闘をばして、奪い合う。
私の描く男色(?)とに何かの違和感を持つとしたら、
そこだったのだろう。

武田のみにあらず、
馬越はもっと、多くの男を狂わせねばならない。

集団にあって、美少年は周囲の男を惑わさねばならぬ存在である。
そこから武田と馬越のみを抜き出すから、滑稽話のようになってしまう。
もしこの二人の物語が本当のことなのなら、
池田屋以前の男色ブームは決して二人に無関係などではないはずだ。
武田だけが馬越を追い求めたわけではないはずだ。
どういう流れかは判らないが、当てられてか、美しい若者と絆を結ぶ関係、衆道は活性化した。
そして荒れた隊内に耐え切れず、美男たちは屯所から去っていった……(美男五人衆の何人かが池田屋以前に姿を消しているため)

などという妄想が捗る。すみません妄想です。


ところで、森鴎外著『ヰタ・セクスアリス』を読んでみている。
まあ日本の男色史を見ていたら出てきたのでつい……

この本へのイメージはもっととんでもないものだったのだが、
読んでみるとまぁ、なんと読みやすいこと。
金井くんの周囲の人々の石見弁も読んでいて心地よいし、危機が迫っても酷い事態には陥らないことが、なんとなく安心する。

しかし、聞き及び、ぼんやりと想像していた旧制学校の寄宿舎のイメージ、
"少年"を愛す九州人の学生のゴリゴリの男色感を文面から感じ取るに、うわぁほぼ現実としてあったものかと、
身を抱きしめたくなるように感じる。

素晴らしき同人誌を読んだ折に、半ばトラウマのように
焼き付いた観念である。
兵学校での実体験の記事を見るに、身体の芯が揺るがされるような心地をした覚えがある。
興味本位で覗き込んで良い深淵ではなかった。

とここ数ヶ月大いなる歓喜の代償に
後悔をしている最中である。


文中において金井くんは、なぜか同年代の色白愛らしい美少年よりも硬派の男たちに追い回されたり
蒲団で一緒に寝てみないかと誘われたりしていた訳だが(とんでもない)、
当人にしてみれば恐ろしい体験であっても、
逃げる際についでにインク壺を盗んだり、
あるいは息を潜めてやり過ごしていたり、
いざという時のための短刀を胸に潜めて、襲ってくる奴らを"敵"と呼ばわって逃げる時のシミュレーションをしていたりと
なんだか、害を被っているばかりでない描かれ方がとても好感を持てた。

若干痛快な感じすらする。

同部屋の軟派、鰐口もとてもいいキャラをしている。
金井くんを守るでもなく、誰に対しても飄々としていて、金井くんの御父君の声真似などをする。
しかし、
「おれがおらんと(金井を狙う)馬鹿者どもが来るから用心しておれ」
と言ったり、最年少の金井くんがどうせ食べられない闇鍋に参加だけさせるのを止めたりする。
なかなかいい先輩である。

あとこのへんでは
美少年の安達を保護する硬派な大男、古賀
真っ青な白い肌の光源氏に似た"青大将"、児島
という主人公の二人の親友も描かれている。
古賀さんも硬派だしなんだかんだ美少年を保護しているとか書かれるなど羨ま……男色なる人物像であるが、
荒れた日の翌日はしおしおと反省するなどの姿が憎めない。
最終的には安達くんは女に狂ってしまうのも哀しい。

やはり彼らのそうした男色は学校のなかだけなのだ。
だからこそ眩しく見えるのだ。と思って辛い。

妻君たる美少年が欲しい……
この欲望が治まるためには、わたしは今後何をしていけばいいのか。
過ぎし歴史を思いながら身を焦がす馬鹿者なのでした。



令和二年 三月三十一日 江桷雑八