家隅盛塩雑記帳

幕末文久三年がホーム。マイナー新撰組隊士と悪役。

カンフー・パンダ2鑑賞。

今回は映画感想に徹したいと思います、雑八です!


さて、2011年公開の『カンフー・パンダ2』を観てのまとめをしたい。
が、なぜ今なのか。

それは、気になる悪役がいたからなのです……


真っ白くて赤い模様が印象的な孔雀、シェン大老🦚!!

大老って言われると「幕府…の…?」って思いがちなので「シェン卿」とかじゃ駄目だったのだろうか。
いや、大老って呼び方好きだけども!

あと第一作を観てないので、タイ・ランごめんな……萌える設定がありそうなことを知ったので今度観ます。
あとモアナも観たいです。


シェン大老のことを視聴前に調べていた時、結構杞憂があったのだが、その不安を見事に打ち破ってくれて嬉しかった!
なんか、「大老」って付いてるから、部下を寄越すばかりであまり動かないんじゃないかとか、ちょっと出てきてすぐやられる感じなのかなとか、やたらと不安がってました。
しっかしシェン大老よく動く! まさかの下剋上系スタートで、部下に命じるばかりでなく自分も率先して闘うことで見せ場が途切れない、常に視聴者の目を奪うステキ孔雀でした。

白赤黒という目を引く視覚的特徴もさることながら、
シェン大老は聴覚的特徴も魅力の悪役だと思う。
彼の暗器、足についてる鎧(?)、飾り羽を広げる時の音が強調されていて、それらがシェン大老という人物をさらに強化してる!

ウィスパーボイスとキレ声(ツッコミ)の使い分けが素晴らしく、彼自身の闘い方みたく変幻自在な印象が恍惚です。(それでいてしっかり視聴者に憎まれる構造にもなってるし、さらに悪役好きのハートを射抜く強烈なシーンもある)

制作側には「笑える悪役」って言われてましたけど、そ、そうなんか?達観してるからその台詞なのか?って思うくらい、哀しくて、救えないキャラだなあと思う。
細かな表情も魅せる悪役でした。
「両親はあなたを愛してました」って言われた後のあの、即答せずに、少しの間の表情がすごい。
(どうやら乳母だったらしい)長い付き合いの予言おばばに言われたから余計にくるものがあったのだろうか。
あとかなり目を見開いたり驚いてる顔が各所にあって、そこはすごい可愛い。
パンダ=自分の未来を妨げるものへの怯えがここに出ていたなあ。
本当に贅沢な……字幕版ではゲイリー・オールドマンさん、吹き替え版では藤原啓治さんが演じられていて、悪役としての声帯も充分すぎる全身悪。

ドえっち!!って言いそうになった場面もある。

え、ちょ、これ地上波で流していいんですか?!みんなシェン大老好きになっちゃうじゃん!!(察してください)

いや本当、シェン大老をギュッと抱きしめたい。
それか、ふわふわしてる毛を撫でたい。

最初のナレーションからシェン大老だったので、これはポーと対の裏主人公でもあるんだなと察しました。
一見、ポーの物語だけど、視聴者はシェンの過去を知り、所業を知り、シェンの物語も追っているのです。
ポーやマスターファイブたちだけじゃなく、シェン視点が多いことが、さらにその物語にのめり込ませます。
そして、その中で、ポーとシェン大老は似て非なる、絶対にわかり会えない存在だと知らしめられた。

二人とも「過去に縛られるのはやめる」という思想を持ってるのに、シェン大老とポーには違いがある。

「傷跡は治らない。治るのは傷だ」
「傷跡は消える」

「治す」っていう言葉がシェン大老から飛び出すんですよ、ポーと対峙して、彼を吹き飛ばす時に。
無論、花火で治されるわけないので、これは"お前の傷を治すにはもう存在ごと粉微塵になるしかないんだよ"か、それかシェン大老が自分自身に言ったのかなあと思っている。
その前に言っている、"両親に捨てられた""両親に愛されなかった"という言葉はシェン大老の過去そのものであって、ポーの過去ではありません。
どちらにしても哀しいです、「国全土を制しても、その御機嫌は治らない」大老
「幸せは奪い取るもの」という思想。
与えられるはずだった幸せを(かけ違いにより)奪われていれば、そういう思考にもなるだろう。
なので、自分が幸せを奪ったポーも、自分と同じように憤り苦しむのを期待したのですが、そうはならなかった。

……某所に書いてあって悶絶したのだが、
彼を妨げる「白黒の戦士」がパンダのことじゃなかったって聞いて、彼の三十年はなんやったんや……って泣けてしまった。
確かに直接の死因はパンダが手を下したわけじゃないしな……

両親に追放されてから、周りをオオカミに囲まれていて、同じ鳥類の仲間もいないし、予言おばばもポーも彼に賛同してくれず、最後には側近のウルフ隊長も彼に逆らうという"孤独"をものすごく描写されていた悪役でした。
仲間との絆が大事な作品としては、相手にするにはこの上ない設定なのでしょう。

あ、あの、タイガーがキツイ目つきで可愛かったです。


シェン大老が転げてるシーンとか好きです。
すごくトリっぽい。
復讐の連鎖を断ち切れたポーは凄いけど、でももう少し葛藤とか怒りとかに呑まれそうな場面があっても良かったと思う。
しかし圧倒的なアクションシーン、隙きのない映像美、コメディシーン良かったです! ごちそうさまでした。


追記:藤原さんが演じた悪役は、焼け野原ひろしというようですね。焼けたなぁ…

令和二年 六月十八日  江桷雑八